蓮の葉の露

創作

瞑想をしていると、ハートチャクラの意識がブワァッと広がり、広大な緑色の蓮の葉の上にわたしは二人の人物を見つけた。

一人はTくんという、昔のセックスフレンドで、恋人が死んで自暴自棄になっていた頃のわたしのどうしようもなさを、その後数年間に渡って肉体を使って埋めてくれた人だった。

わたしは当時、新しく別の人と恋愛関係だったけれど、頭がおかしくなりそうなときは、とにかくTくんに抱かれることで精神を地上に繋ぎ止めていた。

Tくんにも別の恋人がいたから、私たちは共犯者のような感じだった。

享楽的に快楽を共有していたわけではなく、
「死にそうだから抱いて」
「わかった」
みたいな感じだった。

Tくんは友愛と性欲と慈愛を併せた目でわたしを見ていたけれど、彼が心のもっと深い奥のところで、いつもわたしを助け続けてくれていたことに、わたしはやっと気が付いた。

「ももちゃん、俺と結婚する?」と彼は言ったことがある。

わたしは笑って、何言ってるんだ、わたしたちはそういう関係ではないでしょと笑った。
彼も笑った。

彼にありがとうと伝えそびれていたことに、わたしは気が付いた。
彼は常に、わたしに生命エネルギーを分けて、この世に繋ぎ止めてくれていた。

もう一人の人物は、
わたしが身籠って堕胎した子供の魂だった。

彼(彼女かもしれない)は、わたしが罪悪感を抱いていることが「不要なこと」だと、ばっさりと取り付くしまもないほど言った。

「あんたは、わたしが来なくても、この道を来たはずだ。わたしはあんたよりも、彼(当時の恋人)のために来た」

この道、というのが霊的な探求の道であることは明らかだった。

当時の恋人は、億単位を動かすビジネスマンでありながら神主の資格も持っている、霊的世界に興味を持っている人だった。

彼は体中を蕁麻疹だらけにしながら、やりたくない仕事をしていた。

彼の本当の望みは「お母さんに愛されたかった」だと思う。

彼の精神は親を憎む子供のままだったから、親になることはできなかった。

老成したようにも感じられる生まれなかった子供の魂は、「わたしは彼をこの道に向き合わせるために送られた」とわたしに言った。
わたしが少しでも罪悪感を感じる言動をしようとすると、非常に不機嫌なイメージを送ってきた。

「そのエネルギーは、不要なことだ。わたしの存在は、消されることによって彼の道を照らす『目』になるためにあったんだから。」

そうか、とわかったとたん、
蓮の葉の上には誰もいなくなった。

ただ、きちんと揃えて脱がれた靴だけ置いてあった。
これは、子供の魂が履いていたものだとわかった。

蓮の葉を浮かべていた水面はやわらかく波紋を起こし、静かに透き通っていた。
緑の葉の上にころりと載った小さな露に、空と山脈が写り込んで世界を成していた。

蓮の茎を、水中で何者かがハサミでプツリと切る音がした。

緑色の葉は、音もなくスッと動き出し、やがて瀧から滑り降りて、姿を消した。